物学研究会

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THEME 2017

超群体_HYPER NETWORK_

ランダムな時代をどう生きるか

20世紀のヨーロッパの夢だった「EU」が今、危機に瀕している。それは単に中東やアフリカからの移民問題だけが原因ではない。アメリカではトランプが大統領選を制して世界中を驚愕させている。情報革命のせいで経済格差が異常に拡大して、ポピュリズムが、人々が描いたあのデモクラシーの理想を実現するどころか、世界を危機に陥れようとしているのである。現在、資本主義もデモクラシーも人間を豊かにするために正常に機能しているのだろうか?

多様性は生命や社会を豊かにするどころか、対立と破綻を生み出し始めている。未来は見えなくなり、世界の動向は想像を超えるほどにランダムになった。まさにジョン・ケネス・ガルブレイズの言うように不確実性の時代になったのである。情報は膨大すぎて、もはや整理し構造づけることができない時代になった。非構造の時代になったのだ。
世界を構成してきた「国家=ネイションステート」は、グローバル化によって人々を位置づけ保障する力を失っている。国家はいまや経済をコントロールする能力さえ失ってしまったのである。成長途上の国が世界経済をコントロールするようになり、世界の経済地図が変化している。

デザインより技術が経済をリードする時代にもなった。世界のデザインはある一定のレベルに達して、気分だけを表現する気楽な存在になろうとしている。今、デザイナーはこの気楽なデザイン「小文字のdesign」から、「大文字のDESIGN」へとその意味を劇的に乗り移る必要がある。デザイナーに必要なのは世界をどう変えるか、企業をどうつくるかという大文字のDESIGNを構想する能力である。デザイン教育もデザイン思想もこの激変に対応していく必要がある。

物学研究会は従来通りに、大きな視野からデザインを考えていきたい。「群体」とは「生きものが群になって形成するもう一つの巨大な生命体」を意味している。今、世界は人が集うことで1人ひとりの人を超えるもう一つの生命体のように挙動し始めている。巨大な鳥の群のなかの1羽の鳥のように自発性を持つ偉大な1人でありながら、同時に、1人ひとりの人間の意志では力の及ばない巨大な生きもののように挙動している。
情報革命によって形成されたこの超群体とでも言うべき世界をどのように生き、どのように乗り越え、世界をつくっていくことができるか、どのように再び美のためにデザインができるか、それを考える1年としたい。

                                       

物学研究会代表 黒川 雅之

THEME 2016

逆説的発想

paradoxical concept

ロボット、インターネットを組み合わせた IoT(Internet of Things) が新しい市場を拓くと多くの企業が注目している。たとえば、自動車と都市開発の分野では、この思想が自動運転技術として注目されてもいて、誰が考えても「楽で安全で安心な道具と環境」として歓迎されている。この自動車は本来の個別性を失って全体環境によって制御され、管理されることになっていくだろう。
しかし、この道具と環境の行く末は、単純ではない人類の未来に関係している。誰もが使える楽な道具は人の労働を減らすし、自動運転は人の注意力を劣化させ、運転する喜びも失わせるだろう。気付けば IoT は人間の主体性をも奪いかねない。
人間社会の発展はこの自動化や IT化、ロボット化によって、否応なしに安全で安心な秩序ある環境をつくっていくだろう。そして、馬鹿ではない人間は人間本来の「自発性」や「運動性」など「自然としての人間の生命性」を取り戻そうと努力もするにちがいない。自動化・ロボット化・IT化の動きは同時に人間の参加性や自発性を取り戻す努力もしていくだろう。
この二つの方向は矛盾し、二律背反しかありえないのではないか? 前者は近代主義がもたらした幸福論であり、技術は「人間の外に自然がある」と考える西洋で生まれ発達した。後者は近代以前の自然思想とも言うべき思想が背後にあり、東アジアに長い間、生き続けてきた「人間の中に自然がある」という考えに基づいている。

この二つを両立させる発想が求められる。その方法は「逆説的発想」である。
まっすぐに考えるだけでは何も生まれない。競争の激しい時代、多様な文化の共存する時代には創造もコミュニケーションも「より深い人間についての思索」と「高度な計画技術、表現技術」を必要とする。たとえば、古代の人々は論理的に説明できないことを「神話」や「寓話」、あるい「象徴」という「総合性を失わないで解答を出す方法」すなわち「逆説的表現」を用いた。
千利休の「朝顔茶会」もまた逆説的表現のすぐれた例である。「満開の朝顔を見て、千利休は秀吉を招待する。秀吉が訪ねると朝顔はすべて伐採され、一輪の朝顔が茶室に差してあった」という寓話である。また、ルネ・トムのカタストロフィもこの逆説的表現・発想の一つである。「母親の子供への愛情は、子供に対する母親の激怒によって始めて実現する」という寓話である。
科学的手法は分析し細分化することで要素を単純化したのだが、そのために失った多くのものを、これからは無視できない時代になった。
デザインでも商品開発や事業開発でも、高度な発想と表現を求められるだろう。現代の多くの優れた創作は、この逆説的方法をすでに採用しはじめているように思う。思想、事業化、商品企画、デザインなどの領域でこの問題を探っていきたい。

                                       

物学研究会代表 黒川 雅之

THEME 2015

原点回帰

科学技術の発達が社会を変え、企業を変え、人を変えてきた。人間の欲望はますます、地球の状況を激しく変えつつある。その変化のスピードは時代と共に加速度的になった。問題はそのスピードと変化の大きさが地球を小さくして地域性を失っていくことである。中国だけの問題だったことも、アフリカだけの問題だったことも、グローバル化によって日本の問題になってくる。海を隔てて極東の島国だった日本も世界の動向に大きく支配されるようになった。

問題はますます複雑になる。変化の幅とそのスピードと問題の複雑さが人間の科学的予測の範囲を超え、人間の生理的限界を超えて理解不能な渾沌状態に追い込んでいる。今では未来の予測ができない程になった。政治、経済、文化のそれぞれで起こる世界の出来事を予言し予測できる人が居なくなった。複雑な状況をコンピュータに入力し解明することも不可能な程のスピードで世界は動いている。このような状況では社会のあり方も企業の構造も人間の生き方もこれまでの発想では時代の変化に付いてはいけない。

ここで言う、「原点回帰」は一頃叫ばれたパラダイム・シフトというおっとりとしたテンポではない。発想を全く変えること。価値軸を変え、生き方を変え、企業構造を本質的に変えることが要求される。いわば一つの革命が起ころうとしているのである。第四次産業革命の前に文化革命が起ころうとしている。

より深い理解のために複数の例を挙げよう。ここで挙げる例はいずれも近代思想自体への疑義の提出でもある。これまで正しいと思ってきたこと、その多くは多くの人たちがすでに気付き始めていることであるが、これまでの理解を反転して近代思想の裏側にもう一つの価値を、規範を再発見することである。
物学研究会はこの問題を「原点回帰」と称して再検討していこうと思う。

1. 不安定こそ価値がある。
2. 完成という概念を捨てる。全ては未完なのだ。
3. 計画性の概念に疑問を持つ。優れた感性をセンサーとして持つことが大切ではないか?
4. いわゆる調和はもう存在しない。動的な調和だけがこれからの調和になる。渾沌の時代である。
5. 経験はマイナスになる。未体験の出来事が頻発する時代になる。過去の延長線上に未来は存在しない。
6. 身体に馴染む道具は本当にいい仕事を生むか?身体との違和感こそ大切である。
7. 情報は何かを伝えるためではない。挑発し受け手の想像力と創造力を刺激するためにある。

これらは近代思想へのアンチテーゼである。「安定」の概念を否定し、「完成」を否定し、「計画性」や「調和」の概念を「経験」の価値を、「身体性」と「情報」の意味を捉え直そうというのである。ここから具体的なことを考えていきたい。人間の生き方について、企業組織のあり方について、事業の意味と価値について、そして、道具のあり方、情報のあり方について考えていきたい。もうその兆しは見えている。社会は着々と変化しつつある。
その変化をトレースして次の時代の予言をしていきたい。

                                       

物学研究会代表 黒川 雅之

THEME 2014

MIND INNOVATION_DESIRE_

長い世界的な不況を経てヨーロッパもアメリカもアジア諸国も、そして日本も次なるパラダイムに移行しようとするまさにその過渡期にある。
はじめから未来の見えにくいこの時代に、果たして技術だけのイノベーションが新しいパラダイムに導く力になるのか疑わしい。B2CからB2Bへ事業の構造を変革しようとする企業も、国際化をきっかけにしようとする企業もある。
そもそもこの時代の変革は情報革命がきっかけになっていた。当然、変化のスピードはこれまでと異なって想像を絶する速さだ。未来の予測ができない時代になったのだ。

このような時代に次なるパラダイムに導くのは「変わらない、変われない、懲りない人間」の力だろう。未来予測ができなければ未来を見ることをやめて自分の内側を見ればよい。結局、世界は人間の世界に他ならないのだから人間の心を探ることこそ近道なのだ。原点回帰である。

願望(DESIRE)を探りたいと思う。社会に人がいるのではなく、人の中に社会がある。人の中に人類がいる。生命の不思議には誰だって気づいている。生あるものは死することも、組織はいつか滅びることも知っている。自然に依存しながらそれでも自立しようとしている人間が新しい時代を知るためには予測ではなく「どうしたいか」、という願望に耳を傾けることである。

世界の構造が変わりつつある。事業の構造も生活の構造も、そして、意識構造もこのままの継続では済まされない。そして、ビジネスの広がりは世界的になった。関税をなくして商品も世界を相手に争うことになる。人材も国際化が求められる。日本人の意識革命が最優先されるだろう。これからの事業も商品も、発見する能力は意識革命が必要である。

そしてイノベーションはもはや継続的な姿勢では始まらないだろう。このままを維持するためのイノベーションは見せかけのイノベーションである。破壊的で予測不能なものへの挑戦となるイノベーションでなくてはならない。
意識に起爆剤を装着することだ。逆転の発想が求められる。通常の思索を破壊するために毒を盛る必要がある。それをMIND INNOVATIONと言いたい。経済の活力を得るために人間力の強化から始めよう。
人生も事業も生命的であるために大切なのは内からこみ上げる「意欲」であり「願望」である。そのためにはデザインにおけるMIND INNOVATIONを起こさなくてはならない。人々の中に起爆剤を仕込まなくてはならない。
先ず、意識のイノベーションがあって、はじめて、技術のイノベーションが可能になる。個人が活力を持つことで企業も活力を発揮できるだろう。

「DESIRE」、それがすべての出発点になる。逆説的にいえば成長や安定を否定して野生への回帰を目指したい。このことから今年度の物学研究会の2014年度のテーマは「MIND INNOVATION_DESIRE_」としたい。

                                       

物学研究会代表 黒川 雅之

THEME 2013

RESET_初期化から始める

今、日本の経済も政治も文化も「底」だと言われている。後は上昇するしかない。
ユーラシア大陸の極西でもヨーロッパの零落が囁かれている。しかし、地政学的見地から見ると日本は独自な位置にある。成熟して成長し切った日本だが、その位置は成長するアジアの一角を占めている。ヨーロッパとアメリカにとって、アジアは地球の反対側にある地域であり、日本と韓国だけが成熟しながら成長するアジアに属している。日本は成長する地域に属しているのだから、アジアの一員として積極的に行動すれば、「成熟国でありながら成長することのできる国」という奇跡を実現できるのではないか。

世界の経済地図は大きく変わった。そして、政治構造も変化している。アジアの成長は西洋の論理が支配してきた近代の思想風土をも変化させていくだろう。文化においてもアジアの時代が来る。政治も経済も文化もグローバル化し、経済の中心も成長の中心もアジアにシフトした今、成長地域にいる日本に求められていることは、過去の成功経験とそれによって得た知識、国の原理に縛られた発想を捨てることである。もはや、表層的な市場調査では異文化との共存のニーズを捉えることができないし、従来の経験だけでは異文化地域における企業活動には役立たない。

人間にとって、企業にとって「価値とは何か?」さえ霧の中にある今、求められるのは原点からの再出発である。それは、生命とは何か? 人間とは何か? 企業とは何か? 価値とは何か? デザインとは何か? 企業は何のために存在し、人は何のために生きているか?を問うことから始められる。
自分自身の脳をリセットしよう。これまでの経験で手に入れたプロフェッショナルに縛られた知識を捨てて、頭脳を初期化し、新たな一歩を踏み出そう。2013年の物学研究会では、その一歩に迫りたい。

                                       

物学研究会代表 黒川 雅之

THEME 2012

DIVERSITY MANAGEMENT_世界の重心が激変する

急速にグローバル化が進んでいる。止められない巨大な力でグローバル化と共に世界の重心が動いている。多様性/DIVERSITYの時代はこうして世界のすべての人々に訪れている。
本年は、「ダイバーシティ・マネジメント」と題し、下記のような視点からデザインを思索したい。

1.世界の重心に合わせて、軸足を移動する。
現実が先に国境を越えて広がっている。生産の重心は、中国、ヴェトナム、インドなどアジアにシフトしている。最初は、より安価な人件費を求めて移動するが、やがて、それらの国々も、独自の生産技術やものづくりの意識を育むようになる。金融の重心も、市場の重心も、移動している。
2.多様性の時代をどう生きるか。
重心の移動を無視して日本に止まっていては、世界の経済からも文化からも外れ、日本のガラパゴス化はますます進行するだろう。重心を追いかけ、軸足を移せば混沌とした多様化の世界に突入する。自己の文化を守りながら、多様性の時代にどう生きるか。
3.広域で発想する時代になった。
事業は「日本での事業」ではなく「世界での事業」になった。「日本」は、本社の所在地か本拠地でしかなく、事業も生活も広域に拡大している。生活も事業もデザインも、多様な民族と文化の混沌とした世界が舞台となった。
4.異文化との共通原理を探る。
日本の文化の源流である中国を含む東アジアの文化を探ることで、アジアとの共存を図り、生き抜くことができるのではないか。日本人はアジア人であることを意識することで、異質な韓国や中国の人々と共存できる。共通する文化因子、共通原理を知ることで異文化との共存の軸が発見できる。こうして、思考も国の境界を越えて拡大する。
5.多様性時代の競争力と企業組織とは。
ダイバーシティ・マネジメントの企業内の目的は、この急激な社会変化に即応できる組織づくりであり、激変、多様化する市場に適応できる競争力の育成だろう。
  そのためには、国、文化、テクノロジー、ジェンダー、年齢などによる、異なる発想の共通意識を探り、新しい発想で革新を生み出すことが不可欠だ。クリエイティブにおけるダイバーシティ・マネジメントの最大活用法を探求する。
6.SNSがダイバーシティ・マネジメントの鍵となる。
国家、民族、企業などの枠を超えて、世界中の人々はすでにつながっている。Facebook や Twitter が代表するボーダーレスのソーシャルネットワークが共通する意識を生み出している。力の無かった多数の民衆の力を結集し国家を新しい方向に導く力を示した。このS N Sがダイバーシティ・マネジメントの鍵となるだろう。

以上、2012年度、物学研究会は「DIVESITY MANAGEMENT」をテーマに思索する年としたい。

                                       

物学研究会代表 黒川 雅之

THEME 2011

先端_まだ、存在しないもの

1990年代半ばを境に世界は一変した。
インターネットがもたらしたネットワーク化、オープンソース化、スピード化が、テレビやパソコン、カメラや自動車など従来のプロダクトの意味を変質させた。発電が分散化して送電線は消え、通信はワイヤレスになって電話線は消え、都市インフラや環境もまた、ますます見えづらくなってきている。

90年代以降、日本のモノづくりが停滞している理由の一つは、ネット社会が生み出した、こうした新しいパラダイムに十分な対応が出来ていないことがある。モノがモノだけで完結していた時代は過去になり、「モノ=マテリアル」と「モノでないもの=インマテリアル」とがITによって統合され、今まで存在しなかった新しい体験を創造する時代が到来したのだ。これらの動きは、従来の産業界の地図を大きく書き換え、新しいビジネスフォーマットを生み出している。

同時に、国境を越えたコラボレーションが新しいアイデアやビジネスチャンスを生み出す。ところがかつて世界を席巻した日本企業は、自社の枠を超え、非日本企業を相手に互角の関係を結び、革新的なアイデアを世に送り出せないでいる。アジアの経済的成長が次の10年のビジネスチャンスだとするならば、「アジアの中の日本」「日本人であること」を超えて、日本のモノづくりの方向性を真剣に考察し、実行していかなければならない。

我々の生活は? 企業は? デザインの行方は?
2011年度の物学研究会は、この現実を直視して、まだ見えないこれからの生活や産業の未来を展望し、また時代の先端に想いを馳せて「まだ存在しないもの」を描いてみたい。
昨年度のテーマ「特殊と普遍」では、人間のDNAに刻まれた記憶とデザインの原理を考察してきた。本年度は、変わらないものと変わりゆくものの間を行き来しながら、「先端_まだ、存在しないもの」を探して行きたい。

                                       

物学研究会代表 黒川 雅之

THEME 2010

特殊と普通

地球の未来を見据えて今を考える時代になった。夢を追いかけることより自分を見つめ直して自己の再構築に人々も企業も一斉に走り始めた。
よく言えば地に脚を着けてしっかりと生活を考えるようになった。悪く言えば野心を失って、夢を描くことを止めて足元を見ることに一生懸命の時代になった。
ところが中国やインドなどの東アジアの人々は今、まさに夢を追いかけている。一攫千金を狙って貧乏人になるか巨万の富を得るかの分かれ目にチャンスを窺い、行動を起こしている。
世界は二色になった。
社会も個人も普遍が見えなくなって、「普遍がどこにあるか?」と探し始めた。自動車は今までの自動車と全く違うものになるのではないか・・・・・。エネルギーは何が主流になるのだろう・・・・・。良い生活とは何を意味するのだろう・・・・・。極東にある日本は成熟の後に何を求めて走るのだろう・・・・・。
世界を見ても多様な、そして特殊な国々がそれぞれの未来を探している。社会を見ても多様な個人がそれぞれの価値を探っている。男か女かの区別も、子供か大人かの区別も曖昧になった。何が幸福で何が不幸かも曖昧になった。 素朴な野心を失って・・・素朴な夢を失って・・・でもきっと人々は再びもう一つの夢を見るようになるだろう。それが生命の意味なのだから・・・。
「特殊」の中にこそ「普遍」が見える。自分自身を見つめて「普遍」を探していこう。

2010年度、物学研究会は近くを見つめて、世界を探すことになる。小さな出来事を見つめ直して、未来を予言していくことになる。

                                       

物学研究会代表 黒川 雅之

THEME 2009

新しいパラダイムの探求

2008年に始まった経済危機は、2009年には本格的な新しい価値軸へ劇的な変化を遂げることになるだろう。この激変は経済だけではない。政治でも文化でも、経済とともに新しい時代へと破壊的に移行することになる。それをしっかり見極めるのが物学研究会の2009年度の仕事である。崩壊するこの時代には、デザインの概念が重要になる。それも、その概念を拡大させて、新しい時代をデザインする時代になる。もはや、感性の時代だとか、リサイクルの時代だとか、ユニバーサルデザインなどという細部にではなく、人間にとっての価値の深部からデザインを再考する時代に突入する。経済と文化はどういう関係にあるべきか?人間の歓びや美はどのような意味を持つのか?を、その根源に戻って思索する時代である。デザインに関係する我々が、経済や企業経営、産業のあり方、人間、社会のあり方に声を大きくして主張する時代になった。物学研究会はそれに向けて注力したい。

                                       

物学研究会代表 黒川 雅之

THEME 2008

感動の仕組み

人々は何を求めて「モノ」を探し手に入れているか。商品というモノが人々に支持されてきたその理由が、著しく変化している。商品の機能性も安全性も社会性も必要条件に変わりないが、それでは充分ではないことを人々はすでに知っている。人々の購入のモチベーションをつくるのはモノから得る「感動」になった。現代、デザインが重視されるのは、デザインが感動を生み出す可能性を持っているからである。価格も安ければいいのではない、高いことさえ感動になる。機能も優れていればいいのではない、操作に苦労することも歓びにつながれば感動的な商品である。デザインが単に美しいことだけでは駄目になり、芸術に近づいて心の深いところに関わるようになったのも、デザインが感動と言う人間のこころの深層に関わる概念になったからである。2008年の物学研究会は、人の心の深部を探り、感動の意味を探し、感動させる方法、即ち「感動の仕組み」を探る一年としたい。

                                       

物学研究会代表 黒川 雅之

THEME 2007

物を極める

物学10年目の今年は、「物とは何か」について、下記のような視点から追求をしていきます。
1. つくることの意味を考える。
2. 物と空間を考える。
3. 職人を考える。
4. 身体感覚を考える。
5. 大文字のデザインを考える。
6. 物とブランドを再考する。
7. 物の普遍性を考える。
このような切り口で、「物」についての思索を続けます。

                                       

物学研究会代表 黒川 雅之

THEME 2006

「情報戦略」デザイン/ブランド/ビジネス/政策

情報化が21世紀の全てをきめると言っても過言ではない。ここで言う情報とは、いわゆるITやデジタル情報だけをさすものではない。知識、暗黙知、伝統、知恵などのアナログ情報、遺伝子や免疫システムなどの生命科学をも含んだ概念である。そして情報の概念が広がる現在、プロジェクトの成功も失敗も、事業の成功も失敗も、教育や経済活動、政治活動の正否もこの情報戦略にかかっている。世論をどう導くか? メディアの関心をどう舵取りするか? 情報をどう発信し、取り込み、戦略的に活用するのか。政治から事業から文化活動まで、全てがこの点にかかっている。価値は「正しいことと間違ったこと」から、「美しいことと見苦しいこと」という視点に移行しつつあるが、同時に、世論がそれを決めかねない状況にあることを忘れてはならない。ブランドとはその世論であり、デザインの評価やビジネスの正否はこの世論がきめることを意識するべきである。

                                       

物学研究会代表 黒川 雅之

THEME 2005

深層からの出発ーー進化から深化へ

2005年度物学研究会のテーマは、「深層からの出発――進化から深化へ」
忸怩たる時代。明らかにパラダイムは変っているのに、曖昧に推移していてはっきりしない。そんな時代をどう生きて行くか。そんな時代でも確かなものを探す方法はある。それは人間の深層を観察することで発見できる。人間は変らない。人と物の関係も本質的には変らない。出発点にもどって考えることだ。 原点から考えることで、人のDNAとして保存された記憶を辿ることで、人が何を求めているかを発見できる。 どんな商品がいいか、どんな事業にするべきか、どんな会社に成長させたらいいか。そのこともその原点に帰ることから見えてくる。 アイデンティティとは何かもそこから発見される。どうすればブランドが出来るかもそこから見えてくる。

                                       

物学研究会代表 黒川 雅之

THEME 2004

パラダイムシフト

2004年度物学研究会のテーマは、「パラダイム・シフト」としたい。
「社会が変わる」、「社会を変える」という時代にあって、デザインへの要求も変化し、拡大しつつある。このような過渡期には、確立した方向は存在しない。自分の立場を客観的に捉え、自ら明確なヴィジョンをもち、多様な考えを聞き、変革の道を模索するしか、次の一歩を踏み出すことはできないのではないか。 2004年度の物学研究会のテーマである「パラダイム・シフト」は、社会と自らのヴィジョン&アクションの融合を目指し、次なるデザイン、新しい時代のデザイニングの信念を探る1年としたい。「パラダイム・シフト」によって、デザインが新しい時代を作っていくのだ。

                                       

物学研究会代表 黒川 雅之

THEME 2003

VISION & ACTION

社会、経済、政治、文化の様々な領域で21世紀の「近代を越えて新しいパラダイムへの移行」が始まっている。苦渋に満ちたその足取りは間違いなく新しい調和へ向けてのプロセスであり、このプロセスにもっとも重要なのは「VISION & ACTION」である。より広くグローバルに、より深く本質を求心的に、より遠く未来を見つめて「ヴィジョン」をもつこと、そしてそのヴィジョンをもとに「アクション」することである。

                                       

物学研究会代表 黒川 雅之

THEME 2002

NEW MORPHOLOGY‥‥誘惑するデザイン

デザインの究極のテーマは人々に感動を与えることにある。人々はその「感動」を求めて商品を入手しようとするからである。 デザインとはその商品の「機能」や「素材」や「形」や「価格」の総合的感動によってユーザーを誘惑することである。理屈ではなく、深い心の深層に働き掛けて心を揺り動かすことである。商品づくりを成功させるにはどのように「現代人の心を捉える仕掛けと形態で誘惑するか」である。混迷の時代をブレークスルーするための「先端的デザイン」の先端性が何処にあるかを探る2001年度に続いて、今一歩、具体的な商品づくりに近づき、「商品購入のモチベーション」に迫りたい。「形」には英語ではFORM、SHAPE、STYLE、FIGURE など様々な意味がある。 ここでは形の意味は拡大させて考えたい。物学は「モノの学問」を意味しているが、産業の視点からは「商品学」でもある。それを生活者の視点から有形無形の商品の「存在の形」を考察していこうというのである

物学研究会代表 黒川 雅之

THEME 2001

主張する思想とデザイン‥‥先端的デザイン

21世紀は良いデザインの意味を問う時代である。 多様な考え方が共存し、思想とイメージの統一のない時代になる。しかし、それは何でもいいという時代ではない。どんな思想が、どんな美学が共感を呼ぶかそれを見定めずして、商品開発も出来ない時代になることを意味している。それほどに多様で明確な思想と個性の挑発的な共存の時代だからである。消費者もこの「いいデザイン」に対して今まで以上に発言をする時代になる。混沌とした印象を持つ時代、しかし、明白な時代の価値が存在し、その多様な価値を予見する能力こそが 要求される時代になると覚悟する必要がある。

                                       

物学研究会代表 黒川 雅之

THEME 2000

情報と遊戯

20世紀は大衆の爆発的登場をささえる工業化の世紀であったが、21世紀は人類を地球的規模でつなぐ情報の世紀になる。大衆の概念は滅び、大衆は人類そのものと同じ意味をもつようになる。21世紀の情報革命は地球を小さな地域にし、瞬時に影響しあう動的バランスを保ったひとつの生物のような全体を形成する。 21世紀、人類は人生のすべてに歓びを求めるようになる。仕事も戦争さえも、死さえも、人生のすべてが<遊戯>になる時代がすぐそこまで来ている。

                                       

物学研究会代表 黒川 雅之

THEME 1999

21世紀のヴィジョンを踏まえて現在の問題を考える

1999年度は、98年度の研究テーマ「21世紀のデザインを予言する」をさらに深め、現在の問題として考え、展開していくことを目標とします。昨年は20世紀のデザインのデザインを振り返ることから始め、20世紀デザインの背景となる社会・産業について議論を重ね、物学研究会なりの共通 認識を得ることができました。 以下のテーマは全て、98年度の活動から導き出された最重要課題であり、20世紀の近代主義を乗り越えようとする意志といえます。

                                       

物学研究会代表 黒川 雅之

THEME 1998

デザイン・ブレークスルー、新世紀のデザインは

今、何をすべきか。そこから出発したい。時代は、目まぐるしく変わりつつある。価値観も大きくかわり、これまで信じてきた考え方に誤りがあるのではないかと人々は考え始めている。そして、さまざまな領域で、価値の基準に変化が起き始めている。今すべきことは、その新しい価値基準の発見である。原点に戻って考えてみよう。状況の上に状況を重ねてきた現実的な価値を、原点に立ち戻ることで、再構築してゆきたいと思う。「デザイン・ブレークスルー、新世紀のデザイン」とは、この革命的価値転換を迫られる現代の、物=商品の在り方を解剖し、新しいパラダイムの構築を目指すものである。

                                       

物学研究会代表 黒川 雅之