3月 06, 2014

巨艦、中国を運転することは容易なことじゃないだろうな。共産党というたった一つの組織がすべてを考えてハンドルを右に左に切っているんだから大変なことである。ハンドルだって巨艦なら簡単には曲がらない。ブレーキだってアクセルだってゆっくりと効き始めることになる。でも現代はすべてがスピードの時代だ・・・。間に合うかな?

タイタニック号だって、氷山を発見しても結局、お腹をこすって沈没することになる。一党支配というけれど、一つの組織だけで・・・しかもその頂上にはたった一人の国家主席、習近平さんが目を配って艦長をしているようなものである。これは大変なことである。もっとたくさんの人の野生的本能を利用したらいいのに・・・と思う。

巨大な国家だから意思を隅々まで届かせるためにはどうしても大声でプロパガンダを叫ぶことになる。中国には至る所に赤い文字でプロパガンダが掲げられている。それも内容はシンプルだ。万人に通じる言葉だから簡単にしなくちゃならない。

政策もシンプルになる。政治家の腐敗をなくすためには高級なレストランに行くなとか高額な贈り物をするなと声高に、具体的に唱える。気づいたら中国の高級ホテルや高級レストランは大打撃を受けて姿をけし、高額ギフト商品を扱う店も閑古鳥が鳴くことになる。大気汚染が国民の不満になると工場を爆破してみせる。汚職を発見すると見せしめに絞首刑にする。分かりやすい方法を用いないと意思が伝わらないのだ。

そして、最近、この三月から北京の外のナンバーを持つ車は早朝6時から9時までは市内には入れない、と決めた。市民は戦々恐々なのだが政府は知ったことじゃない。荒っぽい方法で、分かりやすい方法で国民に大声で命じる。国民は「上に政策あれば下に対策あり」といって不満は言わず対策を講ずる。

反日だってそうだ。巨大な国を治めるためには「国土問題には一切妥協しない」とか「釣魚島は中国のものだ」といい「この範囲は中国の領土だ」とシンプルに表現する。要するにプロパガンダとおなじである。

僕は別に中国を非難などしてはいない。そうしないと巨大な国、中国は共産党一党だけで、習近平さん一人だけで運転できないのだ。アメリカを初めとする民主主義国家は「自発性」という武器がある。放置しておいても国民が自発的に工夫して社会が動いていく。政治はその動きを利用してある意味では柔道の「空気投げ」のように市民の力を利用して運転すればいい。巨大なエンジンじゃなく、小さいエンジンが繋がって大きな力を発揮する。デモクラシーの政治は巨大電算機ではなく、クラウドコンピューティングのようなものだ。

中国の一党支配は中華思想にまで繋がる中国的構造でもある。中華思想とは中国が一番優れていて他の国はそれに従属する国になるという思想である。言い方を変えればそうすることで彼らはまたまた自分で巨大な世界を運転しなくちゃならなくなる。政治の意味が民主国家と異なっているのだ。 まさにお疲れさまなのだ。情報化されてからの絶対的権力が短命なのはそのためなのだ。僕は中国を「共産党王朝」といっているのだが、それはこのことである。

中国の地方政府を訪ねたことがある。会議室で重々しく「黒川雅之氏の訪問を歓迎する・・・」と挨拶され長々と演説するのだが、そのすべてがあらかじめ書かれた原稿を読んでいる。そして、それを取り巻く部下たちが等しく、同じノートにその挨拶をメモしている。一種のセレモニーなのだろう。これもこの巨大な中心を持つ組織構造の末端までの命令の流れを表しているのだろう。

船長さん。お疲れさまです。民主化とはみんなが考えて組織を運営することなんです。一人では疲れますからみんなに考えることを任せてはどうでしょう?市民を信じると、彼らは自分で自分たちの未来を考え始めてあなたはその多くの市民の行動を上手にマネージメントすればいいことになるのです。そう教えてあげたいな・・と思う。

組織には「ツリー型」と「ネットワーク型」がある。絶対権力はツリー型で民主主義の組織はネットワーク型である。ツリー型は「事あるとき」には力を発揮するが「日常的」にはネットワーク型がいい。軍隊はツリー型であり中国は軍事的国家ということもできる。だから恐ろしい。

昔、「アルジェの戦い」という映画を見たのだがそのゲリラ組織が面白い。すべてのメンバーは上に「自分に命令する一人」がいて、下に二人の「命令を伝える部下」がいる。その集まりはツリー型で命令は伝わりやすいのだが官憲がゲリラ一人を逮捕して拷問にかけても上の一人と下の二人しか吐かせることができない。組織は簡単には壊れないし、最上部のリーダーは安全である。

組織はその時代と目的によって選択される。中国は「既得の権利を守る組織」になっている。或いは「無知な国民をまとめる組織」として有効である。それが次第に問題になってきたのである。「多くの汚職」が目立つようになった。内緒にしたい既得権が国民の目にさらされている。情報革命で無知だった国民が「知識」を手に入れ、知的に成長したのである。当然、ツリー型が続きにくいことになる。自然に「民主化」が進行することになる。習近平さんの苦悩はここにある。

その時代の流れを無視すると限界が来る。フェースブックを遮断してもウェイチャットがある。不満はばっと全国に広がる。国民の不満が爆発する前に汚職を処罰し、不良な工場を爆破し、役人の贅沢を禁止するしかない。

中国の大きな変化はそう遠いことではないだろう。世界経済の安定的成長のためにも「革命」ではなく、習近平さんの自発的「民主化」を強く願っている。

人間は本質的に「不安」をもって生きている動物で或る。不安だから芸術が生まれ、宗教が生まれ、不安だから人と人は愛し合い、時に争い、戦争も起こる。世界の各地で戦争が絶えないのは人間の本質と関係がある。だから戦争はなくならないのだ・・・宗教か芸術の力でそれを止めたいと思うのだが・・・。